喪男はじめて物語

サブタイ:怪奇電車男
「これは〜喪男のお話だよ〜!」

お姉さん(以下、姉)「うーん、ネットは広大だわ…」
モグタン(以下、モ)「モ〜グタンっと!こんにちわ、お姉さん!」
姉「あ、モグタン、いらっしゃい。」
モ「お姉さん、パソコンやりながら眉間に皺寄せてどうしたの?ブラクラでも踏んだ?」
姉「ねえモグタン、お姉さん今専ブラ使って2chを見回ってたんだけど、世の中には喪男とか非モテとか言う人たちがいっぱいいるんですって。私女だから恋愛偏差値の低い男(絶対的にもてない男)層が目に入ってなかったわ…」
モ「お姉さん、その発言ブログに書いたらモテモテになれるよ」
姉「ねえモグタン、彼らはどうしてそういう人になってしまったのかしら。私知りたいわ」
モ「まあ、連中は母親が避妊ミスした瞬間から敗北者だったわけだけど…よしじゃあお姉さん、今日は喪男のはじめてを見にいかないっ?」
姉「待ってました〜!」
モ「それ〜いっ!…グルグルパピンチョパペッピポ〜ヒヤヒヤドキッチョナ〜っ!モ〜グタンッ!」


そして時代はOO年前*1へ…


姉「ここは…学校?」
モ「喪男って連中は、家庭環境とかも一因としてあるけど、大概は小中高大と学校に通ってるうちにトラウマ背負ってああなってるから、学校生活を観察するだけで充分なんだよっ」
姉「ふーん、喪男クンもこのころはまだ青春をエンジョイしてたのかしら?」
モ「あ、見て見てお姉さん!あの子、授業が終わってようやく楽しい昼休みのはずなのに、ずーっと机に突っ伏したままだよ!」
姉「本当だわ、具合でも悪いのかしら」
モ「やだなお姉さん、そんなわけ無いじゃないか。ああやって机に伏せていれば、自分一人を抜かして周りで楽しくやってる連中も、自分のほうを横目で見ながらクスクス笑ってる女子たちの姿も見ないで済むんだよ…とは言っても、声は聞こえるから自分の悪口を言ってるのが丸分かりなんだけどねっ」
姉「あら、でもあっちの別な喪男くんはヘッドホンをつけて何か聞いてるわよ。音楽が好きならあっちでギター持ってる子達とかと仲良くなれるんじゃないかしら」
モ「お姉さん、あの子が聞いてるのはアニソンか、いいとこ筋肉少女帯の歌だし、洋楽でもラモーンズとかスミスとかの喪音楽だよ。それに楽器といったらリコーダーしか使えないくせにすぐロックの歴史とかの薀蓄を語りたがるから、あっちで尾崎豊を聞いたり、ストーンズがどうこう言いながらエレキ弾いて喜んでる子たちと上手くやれるわけないよ」
姉「う〜ん、そういうものかしら…あ、休み時間が終わったようね」
モ「あの子ベルが鳴ると同時にいきなり起き上がったね。バイオハザードのゾンビかと思ったよ」
姉「それにしてもあの子、今日は先生に当てられたときしか喋ってないわね」
モ「しかも、どうやら忘れ物しちゃったみたいだよ。どうしても必要なものみたい。…お、隣の子に勇気を出して話しかけたね!あ、でも隣の子は逆のほう向いちゃった!」
姉「周りのみんなが作業に入ってるのに、あの子だけ俯いて机とにらめっこしてるわね…あ〜あ、先生に見つかって怒られちゃった。」
モ「先生が彼に怒った瞬間、周りの女の子が彼を見ながら小声で何か話してるね…少なくとも、良い話題ではないんだろうけどさっ」
姉「でもなんだかんだで授業が終わったわ。あら?モグタン、ホームルームで修学旅行の班を決めるみたいよ」
モ「アハハッ!見事に一人だけあぶれてるね!」
姉「他の子はもう班を組んじゃったみたいね…よし、ここはお姉さんが、彼を班に入れてあげてって皆に言ってみるわ!」
モ「バッ、おま、止めと…ゲフンゲフン、お姉さん、歴史に干渉しちゃダメなんだよ!」
姉「ご、ごめんなさい、モグタン」
モ「いや、分かってくれるなら良いんだ…ホラ見てお姉さん、彼を受け入れてくれる班がどこにも無いから、いつまで経ってもホームルームが終わらなくて、皆すっごくイライラしてるよ!」
姉「喪男くん、ものすごい気まずそうな顔してるわね」
モ「あ、何人かがジャンケンしてるよ…見てよお姉さん、あの一番負けた班の子の嫌そうな顔!」
姉「『ハァーア!』って物凄く分かりやすい溜息ついてるわね」
モ「喪男くんの班も決まったけど、誰一人目を合わせてくれないね」
姉「ねえモグタン、喪男君の修学旅行はどうなっちゃうのかしら。心配だわ」
モ「大体想像はつくけどね…まあ良いや、いってみよう!モ〜グタンっ!」


姉「京都についたわね」
モ「ほらお姉さん、あの集団が喪男君の学校の生徒たちだよ」
姉「…あら?喪男くんの姿がないわよ?」
モ「おやおや、あの班に混ざるのがいたたまれないからって、修学旅行を欠席したみたいだね」
姉「ええっ!かわいそうな喪男くん…」
モ「予想通りだね…でもバカだね、これで集合写真、右上のほうに一人だけ目立って写ることになるよ」
姉「喪男くんには修学旅行の思い出が無いものなのね…」
モ「ま、あったところで良い思い出だとは到底思えないけどね」
姉「ねえモグタン、このままじゃ喪男くんがかわいそうよ。あの子がみんなと仲良くできるようにしてあげましょうよ」
モ「それは無理だよお姉さん。歴史への干渉がどうこうって以前に、一度沈んだ人間っていうのは二度と浮かび上がれないもんなんだ。運とか何かしらの才能とかがある一部の人は別だけど、そうでない大多数の喪男はああやって社会の沈殿物として生きていくしかないんだよ。しかもそうなるのは、遺伝と生まれ育つ環境の両方にあって、そして両方とも彼にはどうすることも出来ない、何度リセットしてもプレイヤーの腕が同じで難易度も同じな以上、ゲーム展開の細部が違っても結果は同じようなものになるんだよ。彼が喪男になるのは生まれた瞬間に決まってるんだ。あの喪男を小学校まで遡らせても、幼稚園までいっても、どこまでいっても彼の魂は鬱屈する宿命なのさ。それはどうやったって癒せないもんなんだ。どうやったって、あの子は幸せには、なれない」
姉「モグタン…」
モ「さ、お姉さん、そろそろ戻ろうかっ!」


そして現代

お姉さんとモグタンはカフェテラスでお茶をしていた。
姉「今頃あの子どうしてるんだろうね〜」
モ「…お姉さん、ちょっとあそこを歩いている人を見てよ」
そこには、ホームセンターのビニール袋に大量の練炭をぶら下げた、ひどく憔悴した様子の男が歩いていた。それはモグタンたちが過去を覗いてきた喪男のなれの果てであったが、年齢以上の老化と、以前に輪をかけて不審な挙動から、お姉さんが同一人物と気がつくのは無理であった。
姉&モ「キャハハキモ〜イ」



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