脱しないオタファッションガイド

国井 本日の議題はファッションに決めました!
ファッションについていろいろ、いま考えるべきではないのか!以前から我々の服装を変えろと、要するに、オサレ雑誌にあるような「カッコいい服」をオタクも着るべきじゃないかと周りが言ってきているけれども、そうではないだろうと。好きなもの着て何が悪い、と思った次第です。
国井咲也 「二次元へいきまっしょい!」)


二次元へいきまっしょい!』なんですが、これは内容としてはアニメ・ラノベ・同人誌・フィギュア・2.5次元などを網羅して説明をするというものです。普段から接するジャンルもそうですが、自分があまり触れないような分野があるなら新しい発見などで楽しめると思います。ですが、個人的に一番面白かったのは、本編よりもあとがきみたいな感じの本田透とアニメ会の座談会でした。
というか正直こういうのがメインの本を期待してたので、次回が有るなら今回をオタク入門者への「黎明編」として、座談会をメインに「未来編」を作ってくれませんかね。


おいといて。


今回はその座談会で話題とされていた「ファッション」についてです。
オタクにとってのファッションは太古より鬼門とされ、電波男だの脱オタファッションガイドだのといったものが出てきてますます口にするのになかなか気合がいるものになってきましたが、この本では中々面白い考察・提案がなされています。
まず、いわゆるアキバ系のファッションと言うものは機能を追及していった結果の姿であるから、前提として機能性が外れたファッションでは話にならない。
一般人の言うところのオシャレな服装というは、雑誌などのメディアで消費するべきものを刷り込まれただけのもので、実際の現実生活と遊離したもの。言ってしまえば「キムタク」や「妻夫木聡」のコスプレにすぎない。彼らが服装について考える際には「カッコイイ」が判断の基準軸にあるが、オタクは「便利」が基本軸となっているのだと。

で、本田透の見解としては、機能的にアキバとかで活動しやすければなんでも良い、自分はとりあえず黒づくめだけど、各人がカッコいいと思えればいい。他人の目を気にしたファッションは無駄。自分の良さを特化していけば良い。ということだそうな。アニメ会の面々も基本的にはその人が好きな服ならなんでもいいけど、ファッションかく有るべしみたいなのを押し付けてはくるなと。

本田 オタク趣味自体、八〇年代からバブル時代にかけてのモテ趣味とは逆で、誰かに評価されるためにやるものじゃなく、自分が楽しむためにやるものですから、必然的にファッションもそうなるわけですよ。「己のスタイル」を確立すればいいということです。
本田透 「二次元へいきまっしょい!」)

…さて、自分もそういった考え方には三世です。
で、以上のような事柄を前提としますと、自分の考えとしては、オタクのファッションスタイルというのは大体二極化するのではないかなと思います。
一方が、現在よくアキバ系ファッションとか呼ばれるような、そのへんに転がってる服を適当に着るスタイル。こっちは割合金の掛からないほうです。「ファッション?外行くときに三秒で着れりゃいーんだよ着れりゃ」みたいな人たちのスタイルですね。
で、もう一方が極めてコスプレに近い形でのファッション。自分の好みの赴くままにゴテゴテと着飾っていく(いやゴテゴテとはしなくてもいいのですが)スタイルです。国井さんは分かりやすい例ですかね。「キラわれるがどーしたっ!やるぜっオレはやりたいよーになっ!」みたいな感じで、モテるのとは別方向に変身願望充足としてのファッションを追求していくタイプです。理想を追求するときの理想には機能的な理想も含まれますし、機能美というものもありますから、機能をとことん追及してく型もこっちに分類して良いかと思います。こっちのスタイルは、モノによってお金が凄くかかったり、かからなかったり。
「モテるとか気にしないで自分なりのファッションスタイルを持つ」となると、この二つのどちらかに傾くもんじゃないかなと思います。この二つにそれぞれ勝手に名前をつかるとすると、前者をオタグランジ、後者をオタグラムとでも言いましょうか。
いや、オタクの話でグランジだのグラムだの言ってると、あの世のカート・コバーンマーク・ボランに呪い殺されるより先に両方のファンから刺されそうな気もするのですが、あんまり他にしっくりくる名詞が見つかんなかったもんで…
グランジファッションのそもそもという所はウロンちゃんの05年の6月14日のあたりにも書いてあるのですが、単に「重ね着で着崩したちょっとホームレスのおっちゃんが入ったカンジ」という以上に「適当」なファッションなのであります。
で、一方グラムファッションとはなんぞやというと、半分女装の中性的格好…というよりも、日本で言うところのビジュアル系に分類されるされるような「着飾った」服装で、自分のなりたい服装にコスプレ(基本創作系)するようなもんです。分かりやすく言うと。ゴスロリなんかこの系列なんでしょう。いや女性のファッションはよくわからんがね。
ということで、現在の手早く着れればそれでいい的な服装はオタクにとってのグランジスタイルでオタグランジ、逆に革ズボンとかジャケットとかの伊達な服装はオタクにとってのグラムファッションでオタグラムである、と勝手ながら命名した次第であります。多分だれも使ってくれない言葉だろうけど。でもいいんだ。
つまり、真のオタファッションとは…


これだー!

これだー!


これだー!
*1




…一応どれもオタクらしいっちゃオタクらしいのですが、いずれにせよ街中を闊歩するにはそれなりの覚悟が必要なファッションです。

ということでオタクのファッションはオタグラム・オタグランジに二極化してくと思うのですが、昨今の状況を鑑みると、やはり十万二十万も金をかけたりはしないけど、それなりに世間一般に迎合する形で服装に気を使いつつオタクにいそしむ、という中間層が多勢を締めるでしょう。
それはモテ志向が捨てられない、適当過ぎる格好は他人の目が気になる、というものもあれば、自分の理想を追求したらコスプレになっちゃうから着れないよ、日常でそんな服装にまで金使えるほど裕福じゃないよ、といったものなどがあるでしょう。
このような中間層も当然いて良いものとは思いますが、ただ個人的には、どうせならファッションも自分のやりたいようにやって欲しいのです。
そこで「オタとして機能的かつコスプレ的変身願望も満たすファッション」というものを考えてどのようなものがあるかと考えたのですが…



…そうだ、あれがあった!


有る程度より年齢上のオタクには身近な服装である場合も多いコレが、意外にもこの要求に応えるものでした。


もう大体想像がついているでしょう。


それは、そう…


スーツだ…!

スーツは普通のTシャツなんかと比べてポケットが多くついて収納性は上々、社会的にも全然オッケー、しかも砂漠でも実は快適だそうです!マスターキートン読んだからわかる。
さらにスーツの変身としての可能性はなにもホンニャラ商事スタイルだけではありません。葬儀用の、あるいは就職活動で使った黒いスーツがあれば、美味しんぼの山岡さんのコスプレになります。
なんかどれにも当てはまらない柄のスーツなら、とりあえず「島耕作」と言っておけばヤングから常務までのうちのどれかにはヒットするはずです。*2
ということでオタクにとって理想と現実の狭間で最適なファッションはスーツだという結論にたどり着きました。


まあ半分ネタではあるんですが、ずっとスーツ着ておけば服装で悩むこともそうないだろうと、半分本気で思います。
僕としては、その人が「せっかくだから俺はこの服を選ぶぜ」と、自分の欲する通りにして欲しい、服装くらいは他人から好かれるためとかは気にしないで、自分が好きになれるようにして欲しいと思います。

いまの時代は”男はあいきょう、女はどきょう”という時代である。われわれの周辺にはあいきょうのいい男にこと欠かない。そして時代は、ものやわらかな、だれにでも愛される、けっして角だたない、協調精神の旺盛な、そして心の底は冷たい利己主義に満たされた、そういう人間のステレオタイプを輩出している。「葉隠」はこれを女風というのである。葉隠」のいう美は愛されるための美ではない。体面のための、辱められぬための強い美である。愛される美を求めるときに、そこに女風が始まる。それは精神の化粧である。「葉隠」は、このような精神の化粧をはなはだにくんだ。
三島由紀夫 「葉隠入門」)

タツオ 誤解していただきたくないのは、僕らは「これをやれ」といってるわけではないということですね。ファッションというのは、あくまで真似するもんじゃないポポ!
国井 辿り着いた先がこれであっても、まあいいじゃんと。
本田 真のファッションには敗者はないんです。全員勝ち組なんです。つまり、ファッションチェッカーみたいな評論家がテレビで「あの人はイケてる、あの人はダサい」とか「ぷぎゃー」とか言うじゃないですか。それはもう、すべて間違いなんです!
一同 ああ〜、いいこと言いますね。
タツオ 一人ひとりが文化であると。「ダサい」「カッコいい」はみんなが決めることじゃない、自分が決めることだと。
(「二次元へいきまっしょい!」)

*1:http://5893.jp/より。変人窟様、色々スイマセン

*2:こち亀でこんなネタがあった気がする