「萌え萌え同人誌ナイト☆」レポ

同人誌ナイト

ここ数日ちょうど関東にいたので、行ってきましたよ「萌え萌え同人誌ナイト☆」。
イベント自体の概要はこんな感じで。

SLUDGE VANGUARD presents vol.2
「萌え萌え同人誌ナイト☆」
いまやエロ同人誌はちまたに氾濫しているが、その歴史を知るものは、少ない。そこで、20年以上の長きにわたって同人誌を買い続ける我々が、幻の規制前同人誌や同人アニメを披露しながら、80年代、90年代のサブカルチャーを考察する。ベテランオタク、若きオタク、サブカル好きの同人誌初心者、大歓迎!!
※出演者がアッ!と驚くような同人誌持ち込みも大歓迎。アッ!と言わせた方にはプレゼント進呈!!
【出演】SLUDGE VANGUARD(鈴本あきら&江戸拳破)、
【Guest】本田透!!!他、同人誌コレクターの皆さん

開始

SLUDGE VANGUARDというのはアニメ会みたいな芸人さんかと思っていたら、ライターさんのコンビ名みたいなものなんですかね。vol.2とありますが、前回は「淫行ムービーナイト」とかいうのをやっていたそうなので、コアマガジンとかあっち方面のひとみたいですね。
で、江戸拳破さんという方がメインでトークしていました。鈴本あきらさんという方となぜかロフトの店長とが司会進行みたいなかんじで、本田透さんはゲストのはずなのにひたすら突っ込み役をまかされてました。
上ではサブカルチャーを考察するとか書いてありますが、どっちかというと「同人誌自慢」というか、「オタクの部屋に遊びにきたみたい」なイベントだと本人たちが語っておりました。イベントがイベントなだけに、視覚情報が大目で文章だけでは伝わらない場所も多いですが、なんとか脳内補完しつつ読んでくださいな。
で、話の流れとしてはまず冬コミどうだったーという話から。江戸氏は灼眼のシャナの絵の人の同人について。本田氏は「にじいき」で語っていたようにみさくらなんこつの「ミーアちゃんの玉音放送」を購入したと。土壇場で修正かけたので大変そうだったらしい。あとはガン×ソードのヴァンが童貞をすてる同人誌とか。
本田「アニパロって本編で見れないものをでっていうのが出発点ですよ。ラムちゃんを裸にしようとか。それがヴァンさまの童貞がという話にまできた。段々レベルが高くなって、もう少しで腐女子ものに入りそうです」
最近やおい本を集めている三平×2氏の話から、ショタにたどり着くのはプラトンとか稲垣足穂の昔からの伝統であるという結論に。

今回面白かった点としては、観客の質問コーナーみたいなのがあったことですね。事前に質問用紙を渡されて、それに幾つか質問を書いて、運がよければ読まれるみたいな流れです。いつものしろはた主催のイベントではこういうことは無いので、次回があるならまたやって欲しいですね。

質問

で、その質問コーナーから、「コミケットにおける企業をどう思うか」という質問について。
本田氏 「良いもの売ってれば買う」
江戸氏 「ただ、商業ブースに出す人も、部数が少ないせいで同人誌のひとたちがつかう町工場みたいなちっちゃい印刷所に頼むらしくて、印刷ルートの取り合いみたいになってるんです。印刷を企業に抑えられちゃったりするような資本主義の原理が働いているみたいな」
小ロットで普通の本を出すような印刷所に頼むとえらい高くつくので町工場みたいなほうに頼むのだそうな。

評論は倍率が高くないはずなのにコミケで落選してしまったという話から、東浩紀について。席上の誰もが「波状言論」の名前が思い出せず、観客の一人が指摘。以降、「出演者の度忘れは観客がカバーする」という不文律ができる。

ロリコン同人誕生

本題の同人誌に入る前に、同人誌が流行ってくるにあたり、メディアの露出がどのようなものだったかという話。
江戸 「昔のオタクは『ロリコン』『根暗』と呼ばれてた。多分それは≒で、ロリコンとかが出てくるその前には『二次コン』つまり二次元コンプレックスという言葉があった。で、それがどういった経緯で出てきたかというと、80年の正月号のアニメージュを見ると、『ガンダムは異端だが良い作品には違いない』という変な話してるなかで、出渕裕が『そうですよ、アニメのほうが良いですよ、生々しいのは嫌なんです』といったのに対して司会が『出渕さんみたいな人を二次元コンプレックスって言うらしいですよ』といったのが僕の記憶にある限り最初の二次コンという言葉です」
本田 「出渕さんが初めだったんですね。まさにアダム
ファンロードの親雑誌(?)のアニメックにて、「’ろ’はロリータのろ」というそのまんまな特集が組まれ、しかも表紙がカリ城のルパン。この中でクラリスマガジン大活躍という話や、「美少女同人誌頑張っている」という話がある。
江戸氏 「つまりこの当時の同人誌っていうのは今で言うやおいものか大学の漫研、それと、『ファンジン』というやつ。今で言うファン倶楽部です。そういったものが主流だったなかで、『シベール』という同人誌が出てくるんです。これは吾妻ひでおの周辺にいた人たちが作ったもので、多分『シベールの日曜日』からタイトルを取ってるもので、萌えっぽい作風なんです。等身の低い女の子たちが’ぱやぱや’みたいな。それが出されるのが79年」
本田 「苺ましまろの同人誌みたいですね
シベールを皮切りに、雨後の筍のごとく猛烈な勢いでロリコン系の同人誌が台頭してきたという。
江戸 「僕は持って無いんですけど、シベールって表紙に何も描いてなくて、黒いカバーのものと白いカバーのものとに分かれてるんです。それで「黒シベ」「白シベ」とかよばれてたしかもどっちもビニールカバーの中に入ってるんで中身が確認できないんですよ」
本田 「フリーメイソンみたいですね。初期の裏ビデオのような…だから当時の同人誌って命懸けだったんですねえ」

ロリコン同人拡大

81年頃、フュージョンプロダクトというコミケ関係のところで「ロリータ、或いは如何にして私は正常な恋愛を放棄し、美少女を愛するに至ったか」という同人誌がでたという。
本田 「身につまされる話ですねー。俺は二次元に旅立った⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブーン みたいな
表紙がパッと見、美少女というより「キャリー」みたいな*1感じでかなり怖い。
本田 「当時ってやっぱりまだ文学趣味が入ってたんですよね。澁澤龍彦の少女コレクションとかが必読書みたいになってて。そうすると球体関節人形が好きになって、年取ってからイノセンスを監督したりするようになる
江戸 「立ち食いそばに繋がってくという話もあります」
そういや立ち食い師の映画って何時やるんでしょうか。
さて、その同人誌のなかで吾妻ひでお蛭子神*2など当時のロリコンブームを引き起こしたそうそうたる面々が座談会を繰り広げていたと。*3
本田 「池田屋の集まりみたいですね。こいつらをこの時皆殺しにしておけば、こんなことにはならなかったみたいな…この人たち皆失踪して見なくなった人たちばかりですよね。やはり当局に追われてたのでしょうか
次にレモンピープルの創刊号がでてきた。表紙だけ見ると今のヤンマガとかより全然おとなしい感じなのに、中身が「ロリコンシンドローム」や吾妻ひでおダーティ松本などでなにがなにやらという様相。売り文句が「82年の話題を独占するロリコンマガジン」となっており、この時代ではまだ「ロリコン」という言葉にそれ程屈託が無かったことがわかる。
本田 「このあいだポッドキャストのラジオでアニメ会の比嘉さんが『僕たちロリコンなんです』っていって後で三平さんに叱られてました。公共の場でそういうこと言うなと。僕は本当は巨乳好きなんですけど、その場でそういったら、なんか日和ったと思われそうでつい『僕もそうなんです』と言ってしまいました」
江戸 「当時アニメ好きとか特撮好きって、人形愛とかロリータと≒で見られてたんで、巨乳が好きとかいえない空気がありましたね」
江戸 「82年になると色々な同人誌が出来てきて、そろそろ歴史を振り返ろうという運動も出てきます」
その後プチアップルパイから徳間書店と光栄の類似点などについて。
本田 「(同人誌が)次から次に出てきますね。四次元ポケットならぬ二次元ポケット」
江戸 「でも受験の時とかはコミケにいってないんですよ。あとは同人誌に規制がかかった90年前後、ミニーズクラブ事件とか、あの辺で『もういいや』みたいな感じになって脱オタしかかりました」
本田 「確かにあの頃は僕も一瞬脱オタしかかりましたね。いやー、うさぎちゃんと出会って本当に良かった
江戸 「92年が肝ですよね。91年で脱落しかけて92年にセーラームーンですくわれた」

「エピカル」という同人誌について。怪奇的な題字や内容などが、全体的に萌えというよりも鬼畜的な雰囲気を醸し出している。
本田 「なんでこの当時の同人誌っておどろおどろしいんでしょう。今の萌えとかと大分違いますよね」
江戸 「多分自分の内面の鬱積した良くない部分をだしてるせいなのでは…やっぱり少女マンガが入ってるんですよね。少女マンガの可愛らしさをアニメの絵と合体させて行こうとしているところが形態論的に見られるのでは」
本田 「諸星大二郎っぽいですよね。暗黒神話みたい。竹熊健太郎さんが洒落で作ったみたいな題字ですよこれ。『萌えってこんなかんじ?』みたいな」
江戸 「絶対違うだろっていうw今ならこれじゃあ行列は出来ないですよねえ…」

その他、規制前の様々な同人誌が出てくる。
江戸 「これはまんだらけで高値で売れるみたいな同人誌で…」
店長 「いくら位なんすかコレ」
江戸 「いや、これはもう規制前の同人誌なんで売れないんです。中古としてもダメですね」
本田 「というかここに持ってきて良いんでしょうか…」
江戸 「あっ!…」
本田 「まあここに在るのは中身真っ白のレプリカですからね、大丈夫ですね」
江戸 「…! そうですね、これ中身なんも描いて無いですから」
本田 「今踏み込まれたらもうお仕舞だ…俺ゲストで呼ばれただけなのに…僕知らないぞお」
鈴本 「共犯者みたいですよね」

この頃の同人誌は紙面が全体的に黒く、人死にまくりの殺しまくりで、フィルムノワールみたいになっている。作品をリリカルにするよりも、絵に情念を放出させてる感じ。

「お気に召すまま」という同人誌について
江戸 「これはいろんなアニメのパンチラシーンだけを集めたっていう同人誌です」
本田 「これ、ブラウン管を直接撮影してるんですか!凄いですねえ…今は簡単に作れますけどね。ブログにキャプチャした画像をパパッと…アレほんとは駄目なはずなんですが」
江戸 「タイミング分かってないと作れませんからね」

この時点で役一時間経ってるのですが、80年代初頭から進んでません。このあたりで他の出演者たちに不安が募ります。

同人誌市場の変遷について

江戸 「中古同人誌市場って、希少性とかもそうなんですけど、新しいものを高くするっていうのがあって、これは良いですよね。そうすると古いのが安くなるかなって思ったんですけど」
本田 「いや、規制前のは安くならないでしょう。だって取引できないから、黒いアタッシュケースかなんかにいれてコッソリ取引きするしかないですし」 

吾妻ひでお撲滅運動を発足しよう」というのが書いてある同人誌について
本田 「これは今のアンチブログとかにつながるものですね。弱小サークルはとりあえず大手に噛み付くっていう、僕がいつもやるパターンですね。一番安く上がりますからねえ吾妻さん、こんなんばっかやられて疲れたから失踪しちゃったんでしょうか」

その次に特撮パロディという同人誌。仮面ライダーの美少女化など、擬人化的な傾向がみられ始め、「女の子がロボットに乗って暴れる」というタイプのものが出てくる。これは今回のイベントでは重要なところかも。

江戸 「こっちはオリジナルでこっちはアニパロ、こっちは…花の子ルンルンとキャンディキャンディが巨大ロボットに乗って戦うっていう…なんかもうホント無理やりな
本田 「自分の好きなもの全部詰め込んだって感じですね。なんかコレも怨念の篭ったようなタッチですし」
江戸 「しかもこれ自分たちでアニメのコンテ作っちゃったり、その世界の旅行記とかでっち上げてるインチキ設定集です」
本田 「あー、俺もSFFのコンテ切ってたりしてました。しかし本当に旅立っちゃったみたいな感じですねー」

それから、ソルジャーレディーなどという「戦う美少女」も同人の中にでてくる。ダーティーペアの原作の後ではあるという。
江戸 「ただこの後で美少女のほうに傾倒してくんじゃなくてミリタリーのほうに走っちゃうんですよ。逆ならもっと売れたのに…やっぱちまちましたメカを描くのって楽しいんでしょうね。人間を描くのとは別の良さがあるんでしょう」
本田 「松本零次のメカの模写とか面白かったですよね」

江戸 「美少女系の直系みたいな人は、どうしてたかっていうと、この直撃のロリっていう本みたいな…(ナニがアレなシーンがスクリーンに映る)」
鈴本 「スクリーンに映しながらページ探すのはどうかと思うよ」
本田 「しかしまあ、これは規制されるわなって感じのばっかりですねー。段々過激な本がでてきちゃったってことですね」

江戸 「このあたりで魔法少女とロボとか、ミリタリーと少女とか、ロリコン系とか、創作同人誌とか、グロとか、ある程度固まり始めたんですよね」
83年になると清純系という、美少女がキャピキャピしてるだけな同人誌も出始める。だがドロドロの情念が潰えたわけでなく、どことなく話が暗かったりする。中には大友克洋ばりに書き込みまくったものなども。
また、あさりよしとおなど御馴染みの面々が現れ始めるが、この頃から芸風が変わらず安定している。
本田 「何時見てもあさり先生ですねえ。安心できます。伝統芸ですね
江戸 「また、森野うさぎさんなんかも出てきまして…これは僕なんかが勝手に言っていいのかわからないけど、今の萌え系の絵って森野うさぎとかあさりよしとおからかなり影響を受けているのかなと思います。少女でネコミミでメカで宇宙と色々そろってる」
本田 「幕の内弁当みたいですね。しかしこれ表紙が良く見るとサブリミナル的にヤバイような*4
この辺の作家たちと漫画ブリッコの関係、同人アニメの「アォーク」につながる一連の流れがあるとかんたんに説明。
その後、ゴジラミンキーモモや、地獄少女の原案のわたなべひろしの同人などをみたりしてるうちに時間が迫る。

第一部閉幕

しかしそこで「バービーちゃん官能写真集」がでる。これはバービーちゃん人形がセックスしてたりオナニーしてたり、SMポーズをとらせたりしたものを撮影したという凄まじい写真集。
鈴本 「アメリカでバービーを使って、ここまで過激じゃないんですけど、こういったポーズをとらせて撮ったものをアップしてるサイトとかありまして、それを思い出したりしたんですけど、それよりもずいぶん前の話ですからね。まさか日本人がやっていたとは」
本田 「アメリカの猟奇殺人者の部屋に飾ってあるポスターみたいですね。俺これAIBOでやろうとしてたことあります。『アイボ緊縛写真集』って。ただAIBO高いんで買えなかったんですけど」
江戸 「しかもこれ相手がバルキリーなんですよ。このあたりでジャパニメーションらしさが出てる」
バービーちゃん人形とVF1-Aの絡みという、かつて無いほどシュールな光景がスクリーンに映し出される。*5
本田 「こういうの大谷さんに見せるとまた何とか萌え族(仮)みたいに言われるわけですよ」
江戸 「バビ官はたしか4巻か5巻まで出てたはずです。このバービーがグレンダイザーの格好をしてる表紙とかヘタウマでいいですよね」
本田 「ヘンリー・ダーガーの絵みたいですね。大人気だったんだ」


その後同人誌の画力そのもののレベルアップが見られるという話と、くりぃむレモンの原画集や設定集などを手がける企業ブースの先駆けみたいなサークルが現れ始めたという話。
ここで流石に時間が来たので休憩。
続きは追ってアップします。なんか載せてるとヤバイと思われる文章とかあったらコメントで指摘していただけるとありがたいです。

*1:いや全然違うんですが、雰囲気というかなんというか

*2:えーっと僕は「完全なる遊戯」みたいな小説ばっかり書いてる人という認識なのですが、あってるのかなあ

*3:どうでもいいのですが、僕は「幼女と少女がもんちっち」はなぜか小学生の時分に見てしまい、酷いトラウマになりました。むしろあれのおかげで今マリみてが楽しめているのかもしれないですが。

*4:裸の幼女の股間からメカの棒が延びている

*5:いや、人によってはアレはトラウマになりますよマジで(;´∀`)