水月は二次元翼賛ゲームだ

この間久々にF&Cの水月をやったんですよ。まあ雪さんルートしかやってないのですが…それで以前は見落としていた重大な発見をしたのです。タイトル通り、このゲーム(の雪さんシナリオ)って実は「二次元>三次元」という思想を開陳している作品だったのですよ!

まずですね、このゲームのストーリーなのですが、はてなキーワードから抜粋しますと

梅雨明け、蒸し暑い昼下がりに『僕』は目覚めた。 記憶喪失――何もかもを失って。
混乱、そしてすがる過去がない事の恐怖。 闇夜に怯え、震える『僕』を救ってくれたのは、
自分のメイドを名乗る少女、琴乃宮雪。 そして友人たち――宮代花梨新城和泉、大和庄一。
優しい人たちに囲まれて『記憶喪失の自分』の新しい生活が始まった。
それは、どこかぎこちなくも優しい時間。 『僕』はそんな時間に幸せなものすら見出し始める。
 
けれども、目覚めたその日から続く悪夢だけは変わることなく『僕』を苦しめ続けた。
夢の中には少女がいた。 色素の欠けた白い肌と赤みがかった瞳。
そして、闇夜を呑み込んで、なお黒光りする髪。 数週間後の七夕の晩、『僕』が出会う美しい人。
牧野那波――
それが、毎夜のように『僕』が射抜き殺し続ける少女の名前だった。
メーカーホームページより。


となります。まあこれ嘘です。
いや嘘ではないのですが、このあらすじではトノイケ先生の魂が伝わってきませんよね。
ということで、真実を順に明かしていきましょう。
このゲームは…ゲーム自体は二次元のものですよね。で、制作しているのは三次元です。でも二次元キャラにとっては、お話は「三次元での出来事」として進むわけです。まあこれはどのゲームというかお話でも一緒ですね。で、「そのお話における三次元世界」において、主人公は「お話における二次元世界」を妄想し、ついには「二次元こそがヽ(゚д゚)ノええじゃないか」と悟りを開くわけです。
まず主人公は日々妄想を怠らない重度のオタク。妄想が行き過ぎて三次元を捨て、かなり強固な二次元世界を構築するのです。特にメイドさんというのが妄想まるだしです。だって「自分専属 性格良し 器量よし 頭良し 仕事上手 甘え上手 甘やかし上手 愛読書は『絶技四十八手』のメイド」と、まあこれでも書き足らないのですが、まさに妄想の産物なメイドさんというわけです。でも二次元でのお話なので主人公も「まあそんなもんかな」とかなんとか、大して疑問にも思わず受け入れてしまうのですね。ふつうならもうちょっと突っ込んでもよさそうな部分も、設定の粗が見えそうになると回避するのです。あ、これはあくまで主人公の妄想設定における粗という意味ですよ。ややこしいとは思いますが。
あ、そうそう、この主人公にとっての二次元世界の象徴であるメイドさんというのが、水月で最強を誇る萌えキャラの雪さんです。まあ人気があるのも当たり前です。彼女は二次元そのものなんですから。っていうかトノイケダイスケさん本人が「自分の趣味の結晶」とか言ってますしね。
で、そんなふうに妄想ライフをエンジョイする主人公ですが、たまーに「俺、このまま萌えてるだけじゃあダメだよなあ…」という思いに駆られてしまいます。頭も悪いし、運動も出来んし…一応「記憶喪失とそのショックでなんも出来ないが、本当は超優秀」という脳内設定にはしてあるけど、このままいったら誤魔化しきれんし…これらの思考は勿論主人公の意識上に現れることはないのですが、無意識下でさりげなーくごまかしたりしてます。
でもある日、三次元女代表の幼馴染に「キモメンでは駄目だ!ド━(゚Д゚)━ ン !!!モテるための努力をしろド━(゚Д゚)━ ン !!!」とかなんとか言われてしまうのです。その言葉に「キモかろうがなんだろうが俺は俺だ!放っとけ!」とブチ切れた主人公は思わずその幼馴染にビンタかましてしまうのですが、そこはバキもびっくりなリアルシャドーの達人である主人公、ちゃっかり雪さんが守ってくれたのだと妄想で記憶を書き換えてしまいます。…この辺、実際のテキストには全く書いてないことですが、絶対そうですって!だって雪さんは主人公の脳内住人なんですから、どうして他人にビンタが出来ましょうや(`・ω・´)つ
で、この主人公、お話が進むにつれですね、どんどん脳内設定を増築していきまして。山の民だとかなんとか、本で仕入れた知識を、辻褄が合うように積極的に雪さんの設定に取り込んでいくわけです。凄いですね。自分の精通のときも、雪さんを妄想で使っていたようです。すげえや!
おまけに、主人公の父親というのが交通事故でいまだ入院しているという設定なのですが…どうもこれも、主人公と萌えキャラの設定で言い争った末に謀殺されたのではないかとおもうのですよ。主人公専用の萌えキャラであるはずの雪さんにですね、勝手に両親が自分のせいで死んだとか殺されたとかなんとか無理やり設定をくっ付けてるわけです。そりゃあ自分の脳内キャラに設定厨の親父が勝手に設定付け加えてたら怒りたくもなるかも知れませんが、大人げなさすぎです。

今にして思えば、アルバムに写真がないという設定は今の僕に都合がいい。
僕が物心つくかつかないかの頃に、彼女がやってきたという設定も、何より僕が記憶喪失であるということ自体…
そうだ…彼女は、人格、容姿どころか、その経歴にいたるまで、今の僕に都合よく出来すぎている。
水月


でもって雪さんと結ばれたりなんかして、やっぱり二次元最高だなあとか思ってたら突如妄想力が切れてしまい、完全な三次元世界にほうりだされてしまうのです。

みんなの言いたいことは、わかっているんだ。
これが現実で、雪さんのいる、あの世界が夢だって…
僕は記憶喪失になって、ちゃんとした過去の記憶が無い。
ひとりでいる寂しさも手伝って、そんな幻を作り出してしまった。
美人で優しい専属のメイドさん
そんな都合のいいものが、こんな田舎町の、こんな家の…こんな僕なんかのために存在していること自体、おかしいんだ。
どこかのゲームで見たような設定。
現実には、ありえない。
水月


「ああ夢だったんだー。そりゃそうだよなあ」と思う主人公。よくあるゲームならここから「現実に帰れ」的なメッセージを発して終わりなのですが、ところがF&Cはそうはいかんぜよ(`・ω・´)つ
「オタクキモイ」「妄想ばっかしてるキチガイ」という目を三次元住民はしてくるわけですが、それに対して主人公は「やっぱりこんな三次元世界はいやじゃああー!!雪さーん!今行くよー!」とPCのモニターの前でパンツ脱いでルパンダイブしようとするのです。しかしここで三次元のモテの魔の手みたいなのがやってくるわけです。しかしそこで主人公は「三次元女はどうでもいい!雪さんには俺しかいないんだあー!」と魂の叫びを上げるのです。そして気がつくとモニターの向こう側…ゲーム内の言葉でいうと「マヨイガ」に居る主人公。そこで二次元の萌えキャラと、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
とっぺんぱらりのぷう。

「あくまで理屈だよ。ただ、現実か幻かを決めるのは、その人間次第だと思う。神様を信じている人間も信じていない人間もいるだろう?それと同じさ…その人に見えるなら…きっと見える。だからマヨイガはあってもいいと思うんだ」
(大和庄一 「水月」)

電波男に先駆けること三年(だっけ?)…まさか、これほどに二次元の効能と素晴らしさを説いた作品だったとは。以前は結局マヨイガにいっちゃった主人公にエエエ、それってありなの?とか思った記憶があるのですが、やり直してわかった!俺は間違っていた!
そう、人は二次元に飛んで良いんだ!

ありがとう、雪さん――


…で、いつになったら音声付のDVD版がでるんすかね?え、トノイケさんも☆画野郎先生も移籍しちゃったから無理すか?トホホ…