恋のドレスとつぼみの淑女―コバルト版姑獲鳥の夏―

なんか色々書かなきゃいけないものとかはあるのですが、それはひとまず置いといて。アニメ会の国井咲也さんが乙女少年祭りで推薦していた「恋のドレスとつぼみの淑女」を読了…
いやあ、実に素晴らしい!流石国井代表は見る目がありますね。これは来年の今頃には第二のマリみてとして持ち上げられてるのではないだろうかと言う作品で、本当に面白いですよ。マリア様がみてるを読めるレベルの層は確実に好きになるでしょう。
アマゾンさんの紹介するストーリーはこんな感じ。

19世紀のイギリス。ロンドン郊外の町リーフスタウンヒルにある仕立屋『薔薇色』。店主クリスの仕立てるドレスは恋をかなえてくれると大評判。噂を聞いた公爵の令息・シャーロックは立つことのできない妹フローレンスのドレスを頼む。採寸のため屋敷を訪れるクリス。恋のドレスはフローレンスの心を映し出す。そこには思いがけない秘密が隠されていて…。英国調ロマン。

ということで、「19世紀イギリス」「公爵」ときて、一見「エマ」みたいな話なん?とか思うでしょう。まあ実際主人公(喪女)とその公爵の息子(妹萌え)とか言うのがそんな感じになったりはします。しかし今回の話のメインはその公爵の息子の妹であるフローレンスについてです。
で、ですね、この作品を要約してしまうとまさにタイトルの通りなのです。
そう、これは、コバルト文庫版の京極堂シリーズです!
うん、京極夏彦好きな人とかに怒られそうだ。まあ読めばなんとなくそうかなみたいに思ってくれると…いいなあ。


主人公は仕立て人ですんで、お話としてはフローレンスのためにドレスを作ると言う流れなのですが、これがまさに京極堂シリーズの憑き物落としと同じなんですね。憑き物落としというのは、論理によって関係者の妄想を解体し、再構成することで、事件の構造そのものを明らかにしていくという行為です。*1でまあ「恋のドレスとつぼみの淑女*2」では、ドレスを着る当人から話を聞いて、その人に合うドレスを作る。そして出来上がったドレスを着る段階において、当人が真実を認識することを妨げていた妄想を取り払うのですね。その結果として、関係者の抱いていた妄想も取り払われることになるのです。いや、これだけ言われてもどういうこっちゃと言う感じでしょうが。
主人公のクリスはシャーロックホームズもビックリの観察眼を持つ人間で、彼女はドレスを作るにあたっては、その観察力から見抜いた相手の「心の形」にあったものを作ることができるのです。ですが、相手の心は京極堂いうところの「妖怪」に憑かれており、ようするに妄想で凝り固まっているのです。だから真実が隠されてしまっていて、自分や自分の周囲の人々の心を傷付けることになってしまうし、当人にあったドレスが作れない。
その凝り固まった心というのが…まさに昨日のエントリで紹介した「コミュニケーション不全症候群」そのものなんですよ。ネタばれになるので言いませんが。まあ興味ある人は両方読んでみてください。大体何が言いたいか分かるとおもいます。
そこで主人公は、周囲の人々やドレスを着る当人と話したりなんかしていくうちに、着る人の本当の「心の形」を見出し、それを京極堂のような長台詞ではなく、ドレスという形で解体と再構成を行い、最終的には彼女の心を曇らせているもの、そしてこの物語における事件の構造そのものを解き明かすことになるのです。
これがこの物語の大まかな構造です。これに付け加えて「エマ」なテイスト、喪女の主人公や世が世ならジュドー・アーシタと名乗っていたであろう妹萌え貴族といったキャラクター、その他なんやかやとくっついてきます。
思うに、マリア様がみてるもそうなのですが、男女に受け入れられる(だろう)コバルト小説には、ジャンルとしてではないけれど、要素の一つとしてミステリが含まれているのだと思います。マリみてを例に見てみましょう。誰が裕巳のスールになるのか、というのは分かりやすいフーダニットでしたし、短編の場合にしても、それぞれの物語にかならず何らかの謎があって、それが明らかになって物語も収束するという構造のものが多いです。ですので、実はマリみての面白みは百合百合のキャラ萌えにもあるのですが、実際にはミステリの部分にこそあるのだ。*3
ということで、ミステリという観点から見ると、「恋のドレスとつぼみの淑女」という作品は、極めて「姑獲鳥の夏」などの京極作品にちかい構造をしているのです。何言ってんだかさっぱりよって人も、みんな読めば分かる(はず)ので、是非買って読んでください。2chのラノベ板行ったらスレもない状態なので残念だ…
調子にのってゴチャゴチャ言ってきましたが、眠気で頭がどうかし始めているのです。ゆるしてつかぁさい。('A`)
最後に、ホントに面白いんで読んだほうがいいよ、これは!

*1:間違ってたらスンマセン('A`)  

*2:略称とかないんかな

*3:得意げに言ってるけど、この程度のことはもう言い尽くされてることなんだろうなあ…('A`)